はれあたまダイアリー

とにかく続けるよ

たったこれだけの家族

Sさんとは
車のディーラーさんとして
長いつきあいがある。

暮れになり
今日は毎年恒例のカレンダーを
持ってきてくださった。

Sさんと言えば
ひと月ほど前に
車の点検に行ったまほろばちゃんが
Sさんのお母さんが
今年に入って亡くなられたのだと聞いてきた。

まだ60代になりたてぐらいの
お年ではなかったかと思う。

母親を亡くすというのは
この世で最もつらいことの一つで
たぶんいくつになってもつらいことだと思うが
若いとなおさらだ。

そして
今日カレンダーを持ってきてくれた
Sさんの飼い犬が
今日亡くなったのだという。

母親を亡くすのもつらいが
飼い犬や飼い猫を亡くすことがどれだけつらいか、
飼った経験のある人なら容易に想像できる。

短い間に家族を二人失い
悲しみの底にあるSさんの気持ちには
簡単に寄り添えないが
それでも寄り添いたい真似事を。

歌人 河野裕子さんは
66歳でガンで亡くなった。

「手をのべてあなたとあなたに触れたきに 息が足りないこの世の息が」

など胸を打つ闘病中の歌が目に留まり
本を買ったのだった。

「たったこれだけの家族」というタイトルからも
家族への深い愛情が感じられる。

河野さんが息子さんのことも
たくさん歌われているので
いくつかを。

狂ほしく 突如かき抱くわが癖も 吾子なれば疑はず 二人子育つ

十八の息子はほとんどもう他人 甲羅のような革ジャンパー着て

たったこれだけの家族であるよ 子を二人あひだにおきて山道のぼる

長生きして欲しいと誰彼数へつつ つひにはあなたひとりを数ふ

さみしくてあたたかかりきこの世にて 会ひ得しことを幸せと思ふ

灯ともれる家には私が待つことを必ず忘るるな雨の桜桃(ゆすらんめ)

ご家族様の
ご冥福をお祈りします。